第6章 姫がいなくなった(光秀さん)
本能寺で信長様を助けた女は奇妙な女だった。
明らかに身なりがおかしいのもそうだが、言動や表情は窮地を脱したにしては暗く、胸のうちに何か秘めているようだった。
「信長様を襲ったのはその方ではありません」
秀吉が俺に食ってかかっているのを見かねて、その女は証言した。
火事場に居合わせ、見知らぬ男達に疑いの目を向けられ、普通の女ならば耐えられないだろう。
だが気丈にもそう証言した。
誰からの差し金だろう。
俺に恩を売り、取り入ろうとしてくるだろうか。
しかし、どこか思い詰めたような表情が気になった。
………それが舞の第一印象だった。