第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
そうして始まったのはやっぱり王様ゲームだった。
最初は遠慮がちな命令ばかりだったけれど、回数がかさなるごとに命令が難しいものに変わっていくと、場は大いに盛り上がった。
幸村「よしっ、俺が王様だな。
んじゃあ、3番が二人羽織で2番にモノを食わせる」
「え!?私、3番…」
謙信「俺が2番だ」
「え、私が謙信様の羽織にもぐりこんで食べさせるんですか?
幸村、本気?」
羽織にもぐりこむで、ムリ1!
謙信様にあーんのハードルが高すぎる。ムリ2!!
謙信様は絶対拒否するはず。ムリ3!!!
こわい。ムリ4!!!!?
兎に角(とにかく)、全力でムーリーだよ~~!と叫びたい。
それなのに幸村と言えば得意げな顔でフフーンと笑っている。
幸村「ぜってー変更なしだ!さっき散々笑った仕返しだっ」
「私は笑う前にいっぱい助けてあげたじゃん!」
幸村「いーから、お前もやってみろよ」
幸村の顔にはありありと『謙信様が食べ物を押し付けられている姿を見たい』と書いてあった。
とんでもないことになったとクジの棒を見つめたけれど、数字が変わるはずもない。
(どうしよう…)
謙信「お前に何をされようが怒らない。さっさと来い」
「え、えぇ…ほんとにやるんですか~?
謙信様の羽織に潜り込むなんて…できません」
佐助君に助けを求めて、余計こじれて窮地に陥っているんだから本末転倒。
とりあえず『来い』という命令には従おうと、そろり進んで謙信様の背後に立った。
「え、と……」
しゃがむでもなく胸の前で手をもじもじさせていると、謙信様は既に腕を抜いた羽織の前を広げ、私が入りやすいようにしてくれた。
謙信「何をそんなに躊躇っている?おいで」
柔らかい表情に優しい言葉。
それでも躊躇すると、謙信様は怖がっていると思ったのか重ねて誘いかけてくる。
謙信「たかだか余興だろう。誓って怒りはしない」
「う…」
上機嫌にも見える謙信様を、また不機嫌にさせてはいけない。勇気を出して高級そうな羽織の中に入り込んだ。