第38章 息が止まるその時に(謙信様:誕生祝SS2025)
兼続「謙信様を畳に寝かせるわけにいかんな…」
押し入れから座布団を出してその上に寝かせ、またしても納得できない顔で持ち上げた。
兼続「待てよ。俺が布団を使い、謙信様がなぜ座布団で寝なくてはならないのだ」
兼続はぬいに布団を明け渡し、自分は座布団を並べて横になった。
布団に埋もれているぬいを見て、兼続はやっと安心して目を瞑った。
兼続「謙信様と舞は仲良くやっているだろうか…」
本当はついて行きたかったが謙信に残れと言われて、代わりに佐助を行かせた。
寂しいわけではないが置いて行かれた感は少し…ある。
だがこうして謙信のぬいをあれこれ世話している間は、その気持ちを忘れていた。
兼続「ふ……舞の推し活とやらも捨てたものじゃないな」
兼続はぬいに布団をかけ直して目を閉じた。
――――数日後に謙信達が帰城した。
兼続「ほら、ちゃんと世話をしておいたぞ」
「あれ、ぬいの着物が変わってる?
ん?兼続さん、風邪ですか?」
兼続「謙信様に毎日同じ着物を着せられるか。
風邪は気のせいだ」
「いや、メチャクチャ鼻がつまってるじゃないですか…」
連日の寝不足と座布団寝のせいで兼続が鼻声だったのは言うまでもなく、しかし兼続は名残惜しそうにぬいを舞の手に返した。
兼続「時々預かってやってもいい」
「え?……ふふ。ぬいも喜びます。
その時はよろしくお願いしますね」
こうして戦国時代に推し活人口を1人増やし、今年の謙信の誕生日は無事に終わったのだった。
(END)