第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
秀吉さんは黙ったままだし、完全に怒らせたみたいだ。
自分が特別なんじゃないかって私が見当違いな期待を持ったせいで、秀吉さんは皆の前で恥ずかしい思いをしたに違いない。
「あの秀吉さん、皆の前で変なこと言ってごめん。
ただ、さっきみたいに仲良く居られたらって意味だったの。
妹のままで良いから怒んないで」
抱えている想いとは真逆のことを言う痛みで涙がポロとこぼれた。涙が白いファーにポタポタ落ちて毛が固まって凍りついた。
私と秀吉さんの関係も凍りついて壊れるのかもしれない。
(なんであんなこと言ったのよ。今までの関係が壊れちゃったじゃない…)
後悔のどん底にたどり着いて沈みきっていると秀吉さんの足が急に止まった。
話しをしようとしたんだと思うけど、私の涙に気がついて慌てている。
秀吉「っ!?なんで泣いてるんだ。
俺は怒ってないぞ?」
「だって……何も言ってくんないし、皆の前だったから恥ずかしかったのかと思って…」
冷えた風にあたって涙の跡がヒリヒリした。
秀吉「二人きりになったら話そうと思ってたんだ。せっかく可愛くしてたのに悪かった」
秀吉さんが涙を拭いてくれて、ショールも優しく拭いてくれたけど涙が落ちた所は凍ったままだった。
秀吉「なあ、さっき皆の前で言ったこと本当か?」
「………」
正直に言ったって、私はあの時ちゃんと言った。
それなのに『そうだったのか!?ありがとう!』っていうウェルカムな雰囲気じゃなくて、重ね重ね確認してくるのは『妹としてならOKだけど、恋人のレベルじゃないんだよな』的な感じなのかも。
またしてもボロっと涙がこぼれて凍りついた。
「ごめん、秀吉さん。疲れたから帰る」
秀吉「っ、話の途中だろ」
「全部言ったからもう話すことない」
グスと鼻をすすると鼻孔の中が冷えた空気でジンと痛んだ。
どこまでも凍えそうな寒さの中、私と秀吉さんは立ち止まったまま動かなかった。