第3章 *日向翔陽夢 裏側と裏側
日向はビーチバレーをやりながらバイトがあるし、こちらは学生と言う事で講義が山の様にある。
時間を合わせるのがお互いに難しい事と、友達なのに、と言う壁が通話と言う手段を絶ってしまったのだ。
「元気なのは分かってるんだけど、ね……」
机に伏せながら、スマホを触る。
日向からのLINEの話を見る限り、夜は試合とかではなくビーチバレーを遊んでいる人達と一緒にプレイしているらしい。
砂は優しくて厳しい、とよく愚痴の様に言ってきているので、インドアとアウトドアでは全然違うのだろう。
「次の講義行かなきゃ」
時計に目をやり、講義室に向かおうかと思った所、スマホからぴろん、と音が鳴った。
LINEの通知音だ、と画面を見るとそこには日向の文字。
こんな時間に珍しい、と思いながらチャット画面を開くと一言書かれていた。
『今、電話出来る?』
どうしたのだろう、と慌てて通話ボタンを押した。
そろそろ日付が変わる時間帯だと言うのに、日向の身に何か遭ったのかと、不安になる。
『あっ?翔子?』
三ヶ月ぶりに聞く陽向の声色は、日本にいる時と変わらず明るかった。
緊急性がある様な様子もなく、どうして電話して来たのだろうと、言葉が出て来ない。
『翔子?どうかした?』
「えと……」
やっと声を絞り出したが、言葉が続かない。
当たり前の様に話していた友人である筈なのに、日向が急に知らない男性に感じてしまったのだ。
『ごめん、そっち午前中だよな?授業中だった?』
「う、ううん!今から講義室向かおうとしてたけど、授業はまだ」
日向を不安にさせたくなくて、慌てて答えると電話越しでも分かる位に笑顔の声が返ってくる。
『良かった~、ごめんな、急に電話とかしてさ』
「大丈夫だけど、どうしたの?」
『ん――』
唸る声に腕を組んで悩む姿がすぐに浮かんだ。電話を望んだ日向すら、どうして?と言った様子の反応だった。
『今混ぜてもらってビーチバレーやってたんだけど、上手く出来たからなんか翔子に褒めて欲しくなったのかも!』
明るく言い切った日向の言葉に嬉しさが込み上げてきた。
同時に単身ブラジルと言う遠過ぎる国にいる日向が、寂しさを感じていないと何時から勝手に思ってしまっていたのかと、翔子は反省した。
「日向はやっぱり凄いね」