第2章 *宮侑夢 罰ゲームにキス
「なぁ」
「どうしたの?」
「俺ら、付き合いやしてからもう一ヶ月になるわな?」
「そうだね」
「やのにさ」
「?」
「未やに苗字呼びって寂しくあらへん?」
罰ゲームにキス
「そもそもさぁ、『宮くん』やって二人になるやんか」
侑の言葉に柚杏は困った顔をした。
柚杏の彼氏は高校男子バレー業界で有名な宮侑。高校生最強ツインズ、と呼ばれる様に宮侑と宮治の双子の兄弟だ。
確かに宮くん、は侑の事を指すが同時に治の事も指す。
付き合いだして侑はすぐに柚杏の事を名前で呼ぶ様になったけれど、柚杏は未だに苗字呼びのままである。
「やから、奥手ぇの柚杏ちゃんが俺の事、名前で呼べる様に考えてきよったんや」
「考えてきた?」
何をだろう?と小首を傾げる柚杏の姿が可愛い、と思いながら侑は言う。
「今から名前で呼ばへんで苗字で呼んやらな」
「う、うん」
「苗字で呼ぶ度にキスやるってゆう罰ゲーム!ええって思わへん?」
にっと笑って言った侑の事を暫く眺め、言っている事を理解した柚杏は耳まで真っ赤にして答えた。
「えぇ !? き、キス !? 」
「そーそー。これ位の罰ゲームやへんって、柚杏ちゃんの苗字呼び直らんやろ?」
「ちょ……ちょっと待って宮く……」
「ほら、一回目ぇ」
早速だと侑は柚杏の顎を掴んでチュッとキスをした。
キスする事は初めてではないが、柚杏は慣れないので毎回初めての様な反応を見てせくれる。
「ほらほら、もう始まってるんやから」
「あああのそのまだ心の準備が宮く……んっ」
また苗字で呼んでくるので言い切る前に、柚杏の唇を塞いでしまう。
触れるだけのキスだけれど、柚杏の唇は柔らかくて気持ち良い。
この唇にキスするのが侑は好きだった。
「……っ……み、やく……」
癖が抜けない柚杏はなかなか苗字呼びを止められなくて、口にする度にキスをされてしまう。
分かっているのに口からは『宮くん』が出てきてしまうのだ。
「俺、柚杏とむっちゃキス出来るからええけど、はよ名前で呼んで欲しいな」
「だから、ね……いきなりは……宮くん待って……」
紅潮した頬で訴える柚杏に深い方のキスをした。
口内に舌を入れ、柚杏の舌を絡み取る。
柚杏が逃げ出さない様にしっかりと肩と腰を抱きしめて、罰ゲームと理由を作ってキスをする理由を作るだけだった。