キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第4章 #1 邂逅
「ど―したんだよ?オールマイトだろ、それ」
俺が尋ねると命はもう一度人形を眺め、口を開いて言う。
「おーちゃん?」
不思議そうに小首を傾げつつ言ってきた。オールマイト、だからおーちゃん、なのだろうか。が、それにしては命の反応が悪い。オールマイトを認知していないのかと思う程に。
「そうだね!オールマイトだから『おーちゃん』だね」
ニコニコと笑顔で勝手に結び付けて言う出久は、両手いっぱ広げながら、話を続ける。
「僕もかっちゃんも大きくなったらオールマイトみたいなカッコイイヒーローになりたいんだ!命ちゃんも大きくなったらヒーローになりたいの?」
出久の言葉に命は持っているオールマイトを見て、フルフルと首を横に振った。誰もがなりたいヒーローになりたい、と命は思っていないらしい。
「ヒーローになりたくないの?」
驚いた表情で尋ねてくる出久に、命は小さい声でゆっくりと答えてくる。
「あのね、わたし、ずっと木がいっぱい、ある所にいてね。おとうさんとおかあさんが、お話してね、お外に来たばっかりなの」
「「 ? 」」
命の話に俺と出久は互いに見合った。命の話を理解するには情報が少な過ぎたからだ。
木がいっぱいある所、ずっと、お外。それで三歳の餓鬼に導き出せる知識は……。
「すげぇ田舎から出てきて何も分かんねぇのか?」
俺の問い掛けに命は必死に頭を縦に振る。
そう言えば命の母親も同じ歳の子に会うのが初めてだ、と言っていた事も思い出した。
「そっかぁ……じゃあ命ちゃんは知らない事がいっぱいなんだね。大丈夫だよ!これから色んなのいっぱい見よう!僕とかっちゃんがなんでも教えてあげるから!」
名案、と言わんばかりで興奮気味で出久は言い切った。俺の意見など無視して勝手に話を進めて。
出久が率先して、なのが気に入らずムスッとした表情で言ってやる。
「どーせ出久が教えられる事なんかそんなにないだろ。何時も俺の後付いてばかりいる癖に」
「そうだけど、大丈夫だもん!かっちゃんは命ちゃんに教えてあげないの?」
そう言われ、うっと怯んでしまった。出久の俺ならば絶対に教えてくれる、と断言している表情と、俺達のやり取りを黙って見ている命の視線に嫌だ、とも面倒だ、とも言える訳がなかった。