キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第5章 #2 歳月
ニコッと笑う母親を見てから、命は俺と出久の事を見てきた。そして俺達の所に駆け寄ってくると、俺達の腕をギュッと抱きしめて言うのだ。
「じゃあ出久とかっちゃんのお嫁さんになる」
「あらぁ、命ちゃんは贅沢ねぇ」
「出久とかっちゃんとずっと一緒」
「いいねぇ」
ケラケラと笑う母親から、ギュッと抱きついている命へと視線を落とす。小さな小さな幼馴染。
ずっと俺達と共に居たいと言う、たった一人の奴。
「ご飯の前に三人共お風呂入ってきて頂戴。晩御飯はカレーだから」
母親の言葉に真っ先に反応をしたのは出久だった。目を輝かせながらに尋ねる。
「オールマイトカレー !? 」
「おー、よく分かったねぇ。オールマイト印のカレーよ」
母親はそう言いながらオールマイトが印刷されているルーの箱を見せていた。
最近の人気商品のカレーだ。
「かっちゃん!命ちゃん!オールマイトカレーだよ!あれすっごく美味しいんだよねっ!」
興奮しながら言う出久に対し、俺はあくまでも冷静を装って応えてやる。
本当は嬉しくて仕方ないのだが、どうしても命を前にすると一歩先を進んでいる大人でいたいのだ。
「カレーでんな騒ぐなよ、出久はガキだな」
ツン、と言うとカレーを作っている母親が笑いを堪えている様子で横槍を入れてきた。
「アンタだってコレ好きな癖に何大人ぶっちゃって……」
「出久!命!風呂行くぞ風呂!」
虫かごをまた眺めていた命の手を取り、出久の背中を押しながらずんずんと脱衣場へと向かっていく。これ以上ボロを出さない為にも。
「かっちゃん、シャンプーハットで頭洗わないと目がしみちゃうよ」
「んなもん俺はもうとっくに無くても洗えるんだよ!」
「かっちゃんかっこいー!」
尊敬の眼差しわ送ってくる出久に鼻を高くしながら、俺達は今日も当たり前の様に共に過ごしていく。
流れる歳月は、まるで俺達は赤ん坊の時から共にいた幼馴染であるかの様に関係性を築き上げていくのだった。
(2021,9,13 飛原櫻)