【クロスオーバー夢小説】ソラのコ【REBORN×銀魂】
第8章 空6 温もりの記憶
飛鳥の記憶は暖かくて優しく、大きな腕の中で抱きかかえられている所から始まる。本を持ち、何かを話ながら部屋の中をゆっくりと移動している。その部屋は大勢の子供達がいる空間。
その話声はとても優しく柔らかく、まるで子守唄の様に聞こえていて、飛鳥はこの声を聴いているのが大好きだった。
松下村塾。
そこが飛鳥の記憶が始まった場所だった。
全ての始まりの場所で、終わりの場所でもある…………飛鳥にとっての生家、だ。
「拾った !? 松陽先生本気で言ってるんですか !? 」
「拾ったのはあそこにいる馬鹿一人で十分じゃないのか?役立たずの馬鹿」
「誰が役立たずだ、誰が」
「寝てばかりで松陽先生の話も聞かない奴なんか役立たず以外のなんだって言うんだ?説明してみろ、銀時」
話が完全に脱線をしているのにも気付かず、ギャーギャー騒ぐ門下生である三人組に松下村塾の師、吉田松陽は苦笑いをしつつ、腕の中に抱きかかえられながら静かに寝息を立てる幼子を抱き直した。
門下生の中でも特に自分を慕ってくれている銀時、晋介、小太郎が騒ぐのも無理がなかった。何故ならば今日松陽は突然、一歳になるかどうかの女児の赤子を抱きかかえながらに塾を始めたのだからだ。
突然過ぎる状況に、授業が終わるまで尋ねる事が出来なかったのだ。
で、終わるやいなや上のマシンガントークが飛んだのだ。
「そもそもここは孤児院じゃなくて塾ですよね?銀時を連れて帰って来ただけでも大騒ぎしたのに、今度は赤ん坊なんて……」
心配そうに言う小太郎に続き、晋介は尋ねてきた。
「松陽先生。赤ん坊の子育て経験あんの?」
痛い所を衝かれ、松陽は苦笑いをしながら正直に答えるしかなかった。この三人に誤魔化しなんて出来ないのだから。
「経験はない、初めてだ。女の子、って時点で正直どうしようか悩んでいる」
松陽には伴侶もいなければ内縁、と言える相手もいない。自分が開いている塾に来ている子供達だってある程度の年齢であり、乳児は一人もいない。
親としての経験など皆無な上、同性ではなく異性である赤子に対して何をするのが最善なのかも検討が付かなかった。
「犬猫や銀時とは違うんですよ !? 」
「ヲイヲイ、俺は犬猫と同レベルか、このヅラヤロー」
犬猫と同等扱いには流石に銀時も気に入らないらしく、本格的に噛みつき始める。