第9章 怪我をした
宇髄は走っていた。物凄く、物凄く急いでいた。
「ひなた!?」
飛び込んだのは蝶屋敷。ノックもせず診察室のドアを開ける。
「あらあら、どなたかと思ったら宇髄さんじゃありませんか。
ノックもせずに、失礼ですよ。」
しのぶには目もくれず、診察台に座っている少女に歩み寄る。
「大丈夫か?ひなた」
ひなたは顔の右半分のほとんどをガーゼで覆われていた。
右手や右足にも包帯が見える。どうやら全体的に右側を怪我したようだ。
「心配ありませんよ。ほとんど擦り傷です。ですが、こめかみの辺りを切ってしまっていたので、そこは縫ってます。」
しのぶの説明に、宇髄は胸を撫で下ろす。
そして、傷に触らないように、そっとひなたを抱きしめた。
「音柱様っ?!」
ひなたは人前で抱きしめられて、真っ赤になっている。
「まぁまぁ、宇髄さん。いくらうちのひなたが、可愛いからって、それはいけませんよ。」
しのぶのこめかみの辺りがピクピクしている。
「蝶屋敷に泊まると聞いたが、俺が来たんだ。
連れて帰っていいだろ?」
「、、、そう言うと思ってました。薬の用意をするので、少し待っててください。」
しのぶは諦めたように、宇髄に塗り薬の説明をし、化膿止めの飲み薬と共に渡した。