第6章 初めてのでぇと(前編)
あの夜以来、ひなたは悪夢にはうなされていないようだ。
以前は不思議な顔をしていた宇髄のお土産にも、素直に
「ありがとうございます」
と言うようになった。
特にあれが可愛かった。
宇髄が綺麗な桃色のリボンを買って帰った時。その時つけていたリボンを外して、新しいリボンをつけてやると、恥ずかしそうに、でも今までで一番嬉しそうな笑顔になったのだ。
宇髄がその笑顔に見惚れたのは言うまでもない。
ひなたの中で何かが変わり始めていた。
「ひなた、今日も任務か?」
久々の休みの日の朝餉の時間、宇髄は隊服を着ているひなたに話しかけた。
「いえ、お休みです。」
「ならなんでそんな色気のねぇ格好してんだ?
着物の一枚くらいあるだろ?」
「ないわけではありませんが、動きやすいですし。
特に出かける予定もありませんし。」
ひなたは困ったように笑う。
宇髄はにやっ、といたずらっ子のような笑みを見せた。
「なら、決まりな。」
ひなたは首を傾げる。
「着替えてこい。出掛けるぞ」