第2章 プロローグ
『僕エリュダイトアウルに会いたかったんです!書物でしか見たことなくて、ふわふわの羽毛とかどれくらい賢いのか知りたかったんです!』
「ふふ、いつでも歓迎いたしますよ。エリュダイトアウルは賢いがゆえに人里の近くには住んでいませんからね」
「あーもう!ウルラばっかりずるいぞ!ユリウス、オレはカプリシャススクワーレルのリザ。普段はこの魔王城の料理長だけど、交渉官としても仕事してるぞ」
『カプリシャススクワーレル…交渉官、?』
「ふふん、簡単に言うとなー?」
リザさんはご機嫌そうな満面の笑みを浮かべて、ふわふわの尻尾を左右に揺らしながら、僕の隣に腰掛けた
「交渉官っていうのは、諜報員みたいなものだ。国内なら、反乱の兆候はないか、種族間のいざこざはないか、そういうのを調べたりするんだ」
『国外だったら、戦争の兆候はないか…、とか?』
「ああ、それもあるけど戦争っていうよりは国の内情を探るかな。あとはこの国といい関係になってくれるよう働きかけたり、とか」
『あの、魔王様。それ……僕にはなにかできないんですか?』
「…できない、とは言い切れないがおすすめはしない」
魔王様は少し不機嫌そうに眉間にシワを寄せる、腕組をして指で自分の腕をトントンと叩いているのも苛立ちの証拠だろう
『なんでもやります!勉強だって頑張るし、戦術だって叩き込みます!拾ってもらった分、きっちりお返しさせてください』
「お返しと言われてもな、何かあっただろうか……」
魔王様は顎に手を当てて、軽く首をひねる。肩からサラサラと流れ落ちる髪を見つめていると、ウルラさんがあっと声を上げた
「私のもとで書記官としてしばらく生活してみては?読み書きは教えますし仕事という仕事はほぼありませんし」
「いいね、オレたちの近くにいたらユリウスも安心だろうしね。魔王様はどう思います?」
「異論はない、が仕事が慣れ次第個人の勉学に励むように。あぁ、それから息抜きに花園と旧聖堂に行ってみると良い」
『旧聖堂…?』
「勇者一族との友好の証だ、旧と呼ばれるが特に深い意味はない。神とやらがこの場に留まっておるかは知らんが、なにか良いことがあるかもな」
魔王様はそう言い、仕事に戻ると言い残して書庫を立ち去った