第8章 指名
「リン、後は私一人で平気だ。悟の所へ戻ってくれ」
「うん!!」
天元様の膝下、国内主要結界の基底、その本殿の入り口前で傑が私へそう告げると、私はそのまま方向転換をし勢い良くその場から走り出した。
理子ちゃんと最後に話せなかった。でもこれで良かったのかもしれない。きっと傑が理子ちゃんの気持ちをきちんと汲み取ってくれるはずだから。
…………………
本当に一瞬の出来事だった。
刀で弾くよりも先に
足を踏み込むよりも先に
私の胸へと突き刺さった刃。
弾く事は出来なかったが、掠った己の刀のお陰で心臓は裂けられた…
でも……
私はドサリとそのまま目の前に倒れると、ゆっくりと視界がぼやけていくのが分かる。
この男…何てスピードと身体能力なの…
それに、この人がここにいるということは…悟は…無事なの…
辺り一面自分の血で真っ赤に染まっていくのが分かる。
傑…理子ちゃんを連れて…逃げ…て…
その言葉は声に出せたかも分からないまま…私は意識を手放した。