第1章 一目惚れ
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「で、五条は良いわけ?」
「あ?」
硝子が俺を視線だけで見上げるようにしてから、一つため息を落とす。
「あ?じゃなくて。リンを七海に取られても良いの?」
「取られるも何も、もともと俺のじゃねェし」
呆れたような硝子の表情を見て、自分の感情に苛立ちを覚える。
硝子が言いたい事の意味は分かってる。いや、むしろ…分からないわけがない。
何故ならここ最近ずっと自分に自問自答してきた事だったからだ。
それがまさか、こんな形で自分の本心を知るハメになるとは思いもしなかった。
傑や硝子からはずっと言われ続けてきた言葉。
“悟はリンには優しいよね、自覚してるのかな?”
“五条って、いつからそんなリンに過保護になったわけ?見ててイライラするから早よ告れ”
初めは二人が何を言っているのか、全くと言って良いほど分からなかった。
俺がリンに優しい?過保護?
そんな事考えた事もなかった。リンを特別扱いしているつもりなんて微塵もなかったからだ。
つまり無意識の行動。それこそがまるで全てを悟っているかのように…俺を苛立たせる。