第1章 一目惚れ
リンの、七海を見つめたその視線が、見上げる表情が。
俺の苛立ちをさらに加速させた。
こんな顔、俺は見た事がない。
一度だってそんな表情を向けられた事なんてない。
嫌でも分かった。リンが何を考えているのか。
あいつの長期任務が決まった時はまだ、特に何とも思っていなかったはずなのに。
月日が経つにつれ、当たり前の存在が、いつも隣に居たはずのあいつの笑顔が見れないのが何だかどうしようも無く違和感で。
思わず高専を飛び出してリンの任務先へ向かっていた。会えれば何だか嬉しくて、何気ない話をしているだけで楽しくて。久々に会ったあいつをいつもより近くに感じていた。
俺はその違和感を確認するかのように、何度も遠く離れたリンの任務先まで足を運んでいた。
何となく分かってきた自分の気持ちを。だけど、今まで他人にそんな感情を一度も持った事がない俺は、そんなはずがないと否定しながらも…今日リンが七海を見つめるその表情を見て。俺は心底どうしようも無かったんだという事に気がつく。
リンが大切なんだ。
何よりも。
誰よりも
俺は、アイツが欲しくてどうしようもないんだという事に。