第7章 嫉妬
「そんなわけねェだろ」
「どうして?」
何処かそう寂しげに呟いた悟は、その綺麗な瞳で私を見下ろす。悟に真っ直ぐ見つめられると、碧色がキラキラと反射してその綺麗な瞳に閉じ込められたみたいな感覚になる。私はそれがとても好きだ。
「俺のこの眼を見ると怖えーんだと。キモイだとかバケモンだとか小せぇ頃は散々言われたわ。まぁ言ってろって感じだけど。どうせ最強の俺にビビってたんだよ」
その悟の言葉に、私の心臓がギュッと握り潰されたような感覚になる。
何それ…悟は小さい時からそんな事を言われ続けてきたの?ずっとその言葉を聞いて生きてきたの…?
目の前の悟は笑っているけれど。きっとそんな言葉を言われる度辛かったはずだ。いつも自分は最強だとか、他人なんてどうでも良いとか言ってるけど、小さな子供だった時の悟はきっと何度も傷付いてきたはずだ。
クズな大人に囲まれて生きてきた。…その悟の言葉の意味が、今やっと本当に分かった気がする。
だから私は……
「お前、何つー顔してんだよ」
その悟の困った様に眉を垂れ下げる表情を見て、思わず溢れ出しそうになっていた瞳から涙が零れ落ちた。
「……だっ…て…ヒック…」
サングラスの下からポロポロと溢れ出す私の涙を、悟がシャツの袖で拭ってくれる。
「何でリンが泣いてんだよ」
困ったように小さく笑う悟は、見た事も無いほど優しくその碧色の瞳を細め私を見下ろす。
「…悔しく…て。…悟の瞳は…こんなに綺麗なのに…こんなに…優しい眼をしてる、のに…」
今だってこんなに優しく私を見下ろしてくれるし、こんなに優しく涙まで拭ってくれるのに。
ただひたすらに泣きじゃくる私に、やっぱり悟は優しげに笑うと「俺の眼が優しく見えるんだとしたら、それは相手がお前だからだ」と小さく呟いてまた涙をすくってくれた。
「……どういう意味?」
「そのまんまの意味だろ」