第7章 嫉妬
「全然分かんないよ…」
「まぁお前馬鹿だからな」
「……ひどい…ヒック」
悟の袖が私の涙で色を変えた頃、私は再び悟を見上げる。
「クソみてェな奴らに何と言われようが俺は気にしてねーよ。まぁガキの頃は多少思う事もあったけどな。今はもうまじで何とも思ってねェ」
真っ直ぐに私を見下ろす悟は、私がかけていたサングラスを外しそれを頭の上へとずらして乗せると、目尻に付いていた涙を拭き取ってくれる。
「俺は、俺の大事な奴がちゃんと分かってくれてればそれで良い。例えば、こんな事で号泣してくれるお前とかな」
ポンっと頭に手を乗せ意地悪気に笑う悟は、私を優しく見下ろして「もう泣くな、ブサイクになんぞ」と言ってケラケラと笑って見せた。
「まぁ今は、このルックスのおかげでモテて仕方ねーんだけど」
「…まぁ確かに…そうね」
「本当モテすぎて困っちまうくらいだしな」
「……いきなり調子乗り始めた」
自慢気に笑いながら言う悟だけど、きっと泣いている私に気を使って明るい話にしてくれてるんだと思う。
…本当に、悟って普段口が悪いしオラオラしてるから勘違いされがちだけど、実は凄く優しいんだよね。
「……悟、泣いてごめんね」
「別に、お前が謝る事じゃねェ。それに少し嬉しかった…俺のために怒ってくれて」
「ふふっ…悟にしては素直だね」
「うるせェ…こっちこそ、泣かせて悪かったな」
「私が勝手に泣いたんだよ」
「まぁ、それはそうだな」
「…ちょっと!」
クスクスと笑い、頬に伝っていた涙の跡を消すように、自分で顔をゴシゴシと擦ると、悟を見つめてからニッコリと笑った。