第6章 偽の彼女
「いつも尖ってる悟が照れると、何だか可愛いね」
「うるせェ」
いつもと違う悟はやっぱりどこか可愛くて。もう一度クスクスと笑うとサングラス越しに少しだけ睨まれた。
「ところで、何を買うか決まってるのかい?」
後ろで硝子と歩いている傑がそう話しかけてくる。
「んーそれがまだなんだよね。傑と悟は何か考えてきた?」
後ろへと振り返りながらそうきけば、傑はニコリと笑ったまま首を左右へと振る。つまり考えてきていないと言うことか…
「買うって何が?」
しかも、まさか隣の悟はそんな事を聞いてくる始末だ。これは完全に悟は話すら聞いていなかったんだろう…
「夜蛾先生の誕生日プレゼントを買うって先週話したでしょー」
「知らねェよ、つーか買う必要あんの?」
「知らないじゃなくて、悟は聞いてなかったんでしょ。いつもお世話になってるんだから誕生日くらい喜ばせてあげたいなって思って」
「へー」
へーって思いっきり他人事だね。悟だって夜蛾先生にはお世話になってるのに。
「むしろ悟が一番先生にはお世話になってるんじゃない?」
隣の悟を見上げると、悟は「何言ってんだ?」とでも言いたそうな目つきをしてくる。
「俺かよ?俺別にたいしてなってねェだろ。傑の方がなってる」
「私より確実に悟だろう」
傑に続いて硝子は「どっちもどっちだろ」と呆れたように溜息を吐き出した。
「まぁ二人とも建物壊したり帳下ろさなかったり酷いもんね!」
軽く笑いながら話す私を3人は「いやいや」と声を揃えて言うと
「建物ならお前も良く壊してんだろ」
と、悟にゲラゲラと可笑そうに笑いながら言われた…。
た、確かに…そうかもしれない…