第34章 抱きしめてそばにいて
「とにかく診察するから横になれ」
白衣のポケットへ手を入れていた硝子が自分の椅子を引いてくるとそこへと座る。
「あと五条は伊地知が探してたぞ、さっさと任務に行け」
「いやいやそんなの無理でしょ、やっとリンが目覚ましたんだよ?それなのに奥さんほっといて任務に行く旦那なんている?」
「お前はそうじゃなくてもすぐサボろうとするだろ」
「サボってるわけじゃないよ〜、僕ばかり呪霊の相手してたら他が育たないでしょ?だからたまには譲ってあげてるわけ」
「それらしい事言って納得させようとするのは辞めろ」
「そうだよ悟、伊地知君を困らせないで」
「えーだけどリン、今日は僕と一緒にいたいでしょ?」
きゅるるんっと、いつの間にか目隠しを外しまるで成人男性とは思えないほど可愛らしい表情を私に向けてくる悟は、この顔をすれば何だって許してもらえると分かっているのだろう…
「いや、だけど…ほら。休むにしてもちゃんと伊地知君に連絡しな…?」
そんな旦那さんの可愛い顔を見せられてはキツく言う事も出来ず…というか実は今日くらい一日一緒にいて欲しいなんて思ってしまっているワガママな私の心が、思わずそんな言葉を言ってしまう。
「やったぁ!もちろん伊地知には今からちゃんと連絡するからね」
目で見て分かりそうなほどハートマークを飛ばしてくる悟は、私の言葉に嬉しそうにスマホを取り出し伊地知君へと電話をかけ始めた。