第34章 抱きしめてそばにいて
「……リン…」
口から溢れた声は、僕にしては信じられないほどに小さな声だった。
ベッドへ座る様にして僕の頭を優しく撫でていたリンは、眠りから目を覚ました僕を見下ろし目尻を下げて小さく微笑む。
そして、気がついた時には僕は彼女を強く強く抱きしめ、瞳からは溢れんばかりの涙がこぼれ落ちていた。
「悟、おかえり」
僕を強く抱きしめ返す彼女は、少しだけ苦しそうな声で僕の背中を包み込む。
「…ただいま、リン」
リンの声が耳元で聞こえる。リンの温もりが僕の胸の中にある。
良かった、本当に良かった…言葉に出来ないほどそんな感情が僕の中を全て埋め尽くすくらいに溢れ出して止まらない。
「もう僕…リンなしじゃ生きてけないんだよ…リンがいなきゃ生きていけない」
「うん、ごめんね…心配かけてごめん」
抱きしめたその温もりは本物で、また僕の涙がとめどなく溢れ出した。