第34章 抱きしめてそばにいて
夢を見た。
物心がついた頃から今までの僕の人生がまるで映画の様に映し出されていて、それを僕が一人薄暗い部屋で観ている夢だ。
五条の家に生まれ次期当主として同じ事を繰り返すようにして育てられた毎日。
高専に入り、傑や硝子…そしてリンに出会ってからの笑いの絶えない毎日。
特級術師になってクソみたいに呪霊をただひたすら祓い続ける毎日。
そして、そんな映像をただボーッと一人で見つめる僕。
色々な事があった。
色々な事があったはずなのに…僕の人生は生まれた時から今までずっと呪術の中で生きている。
僕の人生において、それが切り離される事はない。
不思議だ…きっと普通の家庭に生まれていたらまるで違った生き方をしていたんだろう。
呪いも知らず、呪霊も知らず、術式も知らず…
それはそれは平和で平凡で…どうしようもないほど普通で退屈な毎日だったに違いない。
だけど、そんな平凡な世界の中でなら…こんな思いはしなかったのかもしれない。
傑を…リンを…
そこまで考えてふと思う。
あぁ、僕疲れてるのかな…そもそもこれは夢か。
だってこんな事考えるなんて僕らしくない。
弱さも悲しみも辛さも…そんなの僕らしくない。
まるで黒いモヤが僕を包み込んでいくみたいに…僕の人生を映し出していたスクリーンが漆黒に染まっていく。
はぁ、疲れた
僕って最強なはずなのに…
どうしようもなく疲れた…
もう少しこのまま、ここでゆっくりしているのも悪くないかもしれない。
そう思った時だった。