第34章 抱きしめてそばにいて
古く軋む廊下を歩けば、一つの部屋の前で足を止める。
中に入るとそこには眠ったままの愛しい人の姿。
彼女に近づけば、先ほどまでは無かったベットがもう一つ隣にくっつくようにして置かれていた。硝子…本当にベット置いてくれたんだ。
僕は上着を脱ぎ捨て、目隠しを手にかけるとそれを外しリンの隣のベットへと横になった。
ギシリと軋むスプリングに、あきらかに僕にはサイズの合っていない小さなベット。だけど君の横に居られるだけで少しだけ疲れが取れていくのが分かる。
僕はそっと手を伸ばしリンの頬へと優しく触れた。
「リン…そろそろ起きてよ…」
そんな小さな僕の声だけが、静まり返った部屋の中に響く。
「僕は、オマエがいないと…もう息の仕方も忘れそうなんだ…」
頼むから目を覚ましてよ、頼むからもう一度僕を見つめてよ。
久しぶりに彼女の隣で横になったからだろうか、彼女の安心する香りがするからだろうか。今まで全くと言って良いほど眠れていなかったはずなのに…少しずつ睡魔が僕を襲う。
「リン…」
僕は眠気に抗う事なくゆっくりと瞳を閉じると、彼女の手を握りしめたまま久しぶりに眠りへとついた。