第34章 抱きしめてそばにいて
眠れるわけがない。食事も喉を通るわけがない。
硝子だってそんなこと分かっているはずだ。そして僕が八つ当たりをする事も分かっていただろう…それを分かっていて指摘してくれた事も…僕は理解している。
本当僕ってクソだな。それを分かっていて平気で八つ当たりをするのだから。
自分の感情が思い通りにならない。
術師は怒り任せに感情を揺さぶられてはいけないはずなのに。
リンの事になると…僕はいつだって平常心ではいられない。
あの日…僕があの場を後にしてすぐリンは再び意識を失ったらしい。
子供は…無事だ。心拍も確認出来ているし、母子共に身体は安定してきているそうだ。
子供を守ると…そう約束したことをリンは今でも必死に守ってくれている。
だけど…なら何故…
君は未だに目を覚さないんだ…
早く君の笑顔が見たい。
優しい声で名前を呼んでよ…
その小さな身体で僕を抱きしめてよ…
「とにかく寝ろ、お前が倒れたんじゃ元も子もないだろ」
「あぁ…寝れたら寝るよ」
「ったく、最強が聞いて呆れるな」
硝子はそのまま僕の横を通り過ぎると「リンの横にベットを用意してやる、そこで少しでも休め」と呟いたあと、片手を上げ早々とその場をあとにした。