第33章 ただ君だけを愛してる
「傑を止められるのは…悟しかいない」
高専時代、4人で過ごしていた日々が脳裏を掠める。
楽しかったこと、大変だったこと、辛かったこと、幸せだったこと…色々な事があった。
どんな時だって私達4人は一緒だったよね。4人でいれば何だって乗り越えられるとそう思っていた。
だけど違った…私達は1人ずつ強くならないといけなかったんだ。
相手を悲しませないためにも、大切な人を守るためにも。
「悟…我儘言ってごめんね…」
私のお腹へ当てていた悟の掌が温かくてとても気持ちが良い。何だか少しだけまた瞼が重くなってきたような気がする…少しだけ手の力も抜けて行くような気がする。
「……分かった、行って来る。だけど一つだけ、僕に似た可愛い子じゃなくて、僕はリンに似た可愛い子だと思うよ」
「…ふふっ、そうかな」
「僕、信じるよ。リンのこと…子供のこと…だから絶対に2人で僕のこと待ってて」
「うん、約束する…絶対に2人で待ってるから」
「絶対だよ、約束だからな」
「うん、約束…だから悟も絶対無事に帰ってくるって約束して」
「もちろんだよ、怪我一つなく帰ってくるさ。だって僕、最強だから」
悟はそのまま私の唇とお腹へ優しくキスを落とすと「行って来るよ、傑のところへ」と言って白い目隠しをすると、手を合わせ一瞬にして私の目の前から姿を消した。