第33章 ただ君だけを愛してる
「そうだよ僕だよ!リン!!」
「ど…して…さとる…が…」
何故僕がここにいるのかと聞きたいのか…それはそうだ、何故なら僕は本来誰よりも前線で戦っていないといけない人物だからだ。
だけど今はそんな事どうだって良い、君が倒れているのに側にいない方が僕にとってはあり得ない事だ。
「出血多量で気絶していたんだ、だが傷はすでに塞いだ」
僕の後ろから顔を出した硝子が先ほどまでの表情をいつの間にか元に戻し、いつも通り冷静な声でリンへそう告げる。
僕はまだうつろな瞳でボーッと天井を見つめるリンの手を再び強く握りしめると、それを自分の口元へと近づけた。
「とにかく良かった…目を覚ましてくれて…」
指先が震える…声が震える。
初めて怖いと思った、君を失うんじゃないかと…君がこの手からすり抜けて居なくなってしまうんじゃないかと…もう二度と抱きしめられないんじゃないかと…そんな事ばかりが頭をよぎった。
この最強の僕が…ここまで不安に駆られるなんて。ここまで頭がおかしくなりそうなほど不安になるなんて…リンの事以外じゃ考えられない。
だけど目を覚ましたからと言って安心は出来ない…硝子が言うんだ。リンも子供も…まだ安心の出来る状況ではない事は変わらない。
だけどとにかく伝えなければいけない事がある…
「リン…」
その僕の声に、リンはゆっくりと僕を見つめると虚だった瞳を少しずつ開いていく。
「リンは今、妊娠してるんだ。妊娠2ヶ月だって硝子が言ってた」