第33章 ただ君だけを愛してる
硝子のあとに着いて行くと、床に敷かれた毛布の上で眠っているリンの姿。
服は所々破れ血が大量に滲んでいる。傷は塞いだと言っていたが、どう見ても平気そうには見えなくて…硝子の先ほど言っていた言葉が再び頭をよぎる。
僕はそのままゆっくりと彼女の横へとしゃがみ込むと、目隠しを首元へと下ろしリンの手をぎゅっと強く握った。
「…リン」
そう小さく呟くも…もちろんリンからの返事はもらえない。
他の術師を庇って無茶な戦いをしていたって言ってたな。本当どうして君はいつもそうやって…他人の為にそこまでして自分を犠牲にするんだ。
だけど…君は昔からそういう性格だった。誰かのために真っ直ぐに突き進む…そんな純粋な性格だった。
僕はそんな真っ直ぐさに惹かれて…素直で可愛いところに惚れ込んで…君の優しさが大好きになった。
僕はオマエさえ無事でいてくれれば、他はどうだって良いと思うほど歪んだ考えを持っているというのに…
「…リン、僕…無茶するなって言ったろ…」
左手の薬指に付いている結婚指輪を優しく親指で撫でながら、小さく震える声でそう呟けば…
「……っ…」
ピクリと微かにだが動いたリンの指先…僕はそれへすぐさま反応すると「リンっ!!」と慌てて声を上げる。
ピクピクと動く指先に合わせるようにしてうっすらと瞼が開くと「…さと…る」と今にも消えてしまいそうなリンの呟く声が聞こえてくる。