第33章 ただ君だけを愛してる
「妊娠をしていると、反転術式が上手く効かない。胎児との呪力が混ざり合って反発をするからだ。出血量が多かったこともあってリンもお腹の子も今はまだ安全だとは言えない状況だ」
「…じゃあ、リンは…子供は…どうなるんだよ」
まるで硝子の言葉を耳の遠くでの方で聞いているような感覚になる。
さっきまで僕の胸の中にいたのに。抱きしめあっていたのに。愛してるって言っていたのに…
「今はまだどうなるか分からない。ただリンを、子供を信じるしかないんだ…五条…」
硝子の唇を噛み締める顔が…俺を現実へと戻していく。
硝子のこんな表情を未だかつて見たことがあっただろうか。
僕がこんなにも心を乱す事があっただろうか。
愛している人の妊娠を知って、嬉しいはずなのに…それと同時にこんなにも絶望的な気持ちになるなんて
「五条、リンはこっちだ」
数秒唖然と動きを止めていた僕に、硝子は眉間にシワを寄せながら声をかけると早々と歩き出す。