第33章 ただ君だけを愛してる
分かっていたはずなのに…
彼女が無茶をする性格だと分かっていたはずなのに…
クソっ、こんな事なら無理矢理にでも僕の側にいさせるべきだった。
「硝子!!」
普段は絶対に出さないような大きな声がビル内へと響き渡る。
「五条」
硝子は俺の姿を見るなり、一瞬目を見開いた後。いつもの落ち着いた表情へとすぐに戻した。
「リンはッリンは何処」
「奥にいる、まだ意識は戻っていない」
硝子に背を向けリンの元へ走り出そうと後ろを向いた所で、硝子の腕がそれを止める。
「まて五条」
「あ?何だよ、僕急いでるんだけど」
いつもの自分とは違い、荒々しい声が響き渡り、周りの視線がいくつも自分に向けられているのが分かる。
硝子はそんな僕に一つため息を吐き出した後、ゆっくりと口を開いた。
「よく聞け五条。リンの傷は塞いだ。だが見つける前にかなりの出血を流してた…」
「だから何だ。僕が行けば反転術式でどうにでも出来る。硝子、お前だってそうだろ」
「違うんだ五条…聞いてくれ」
「だから何だよッ」
「…… リンは、妊娠している」
「……は?」
「今、もうすぐ妊娠2ヶ月なんだ…」
「何言ってんだよ…硝子。リンが妊娠…?」
頭が追いつかない。リンが…妊娠…?でもそんな素振り全く…
「アイツ自身も気が付いて無かったようだ、気が付いていたらこんな前線で戦ってないだろう」
瞼を伏せる硝子は「私もリンの変化に気が付けていなかった…」と小さく呟く。