第32章 時が来た
「…悟…ごめんなさい」
「大丈夫、分かってる」
「悟にばっかり…辛い思いをさせて…ごめんなさい」
「リンが謝る事じゃない、ただオマエが無事で帰ってきてくれれば僕はそれで良い」
「……っ…」
「リン愛してるよ、だからそんな顔しないで」
「……でも」
「傑もそんな顔しないでくれって言ってたろ、オマエのその顔に弱いって。本当僕達二人は昔からリンに甘いし弱くて嫌になっちゃうよね」
「何…それ…」
ゆっくりと身体を離した悟は白い目隠しを片目だけ上にずらすと、目を細め小さく笑った。
「平気だよ、心配はいらない」
「…………」
「だって傑は僕の親友だから。たった一人のね…」
悟はそのまま優しく私を引き寄せると、額へとそっとキスを落としもう一度私の頬を撫でるとゆっくりと背を向け歩き出した。
私を安心させようとしてくれた悟
何度も大丈夫だと言ってくれた悟
そんな悟がしてくれた事を無駄にしない為にも、私は覚悟を決めないといけない。
この先何が起きようとも揺るぎない心を持つ覚悟を。
悟と傑を見守る、覚悟を。