第32章 時が来た
私が気が付かないわけがない、この呪力を…分からないわけがない。
私はその場から一瞬にして走り出すと、正面ロータリーの前でピタリと足を止めた。
「……傑」
目の前にいるのは、いつぶりかも分からないほど久しぶりに見た傑の姿。
私は思わず目を見開き唖然と立ち尽くす。
「僕の生徒にイカレた思想を吹き込まないでもらおうか」
そして、そんな私の前にはいつもよりも低い声を出す悟の姿。
「悟ー!!久しいねー!!おや、もしかして後ろにいるのはリンかな?相変わらず元気そうで何よりだ」
ニコリと微笑んだ傑は、昔と変わらぬそんな笑顔で私達をニコニコと見つめる。
「まずその子達から離れろ、傑」
だけれど、そんな傑とは違い…悟と私からは重苦しい雰囲気が漂い。そんな私達を見つめた傑はニヤリと口角を上げた。
「今年の一年は粒揃いと聞いたがなるほど、君の受け持ちか。特級被呪者、突然変異呪骸、呪言師の末裔…そして禪院家のおちこぼれ」
その言葉を聞いた瞬間、真希ちゃんが青筋を立て傑を睨み付ける。
「テメェっ」
「発言には気をつけろ、君のような猿は私の世界にはいらないんだから」
「傑、一体どういうつもりでここに来た」
悟が生徒達と傑の間に入り足を止める。
そして傑はそんな悟を真っ直ぐに見つめると、低い声で呟いた。
「宣戦布告さ」
宣戦布告…
「お集まりの皆々様!!耳の穴かっぽじってよーく聞いて頂こう!!」
大きな傑の声が高専内へと響き渡る。
「来る12月24日!!日没と同時に我々は百鬼夜行を行う!!場所は呪いの坩堝東京新宿!!呪術の聖地京都!!各地に千の呪いを放つ。下す命令は勿論鏖殺だ。地獄絵図を描きたくなければ死力を尽くして止めにこい」
百鬼夜行…っ、何を言って…ッ
傑はニヤリと笑い、弧を描くようにして瞳を細めると。
「思う存分、呪い合おうじゃないか」