第31章 大切な日
店内に入れば高級で落ち着いた雰囲気が溢れ出しておて、数人の男女がいるのが目に入った。
一番手間にいたスーツを着た綺麗なお姉さんが私達に気が付き、私は「今日受け取り予約していた五条です」と言うとお姉さんも「お待ちしておりました」と言って半個室のような席へと案内してくれた。
席に座りしばらくすると、お姉さんが黒く高級そうなトレーの上に載せた小さな箱を私達目の前に置き「ご確認出来ましたらお声かけくださいませ」と言ってそのまま一礼をしてその場を離れる。
私はその箱を手に取ると、それをパカっと開けて二つ並んだうちの大きな方を手に取ると。
「勝手に選ぶのもどうかと思ったんだけど…ずっと悟早く欲しいって言ってたし、私も早く悟と夫婦だって目に見える形にしたかったから」
そう言い彼の左手を取ると、そっと手に持っていたソレをゆっくりと薬指へ滑らせた。
「良かった、ピッタリだね」
そう、私からの誕生日プレゼントは結婚指輪だ。
結婚してすぐ、本当は結婚指輪を買いに行く予定だったのだが急な悟の上からの呼び出しで買いにいけず、その後も何度か行こうとしたものの…ことごとくお互い急な任務が入ったり出張が長引いたりと全然予定が合わなくて…
「早く結婚指輪が欲しいー!!!」「僕のリンちゃんだって早く皆んなに見せびらかしたいのに!!左の薬指に指輪付けたいのに!!」「何で結婚指輪買いに行こうとするたび呼び出されるの!?ねぇ僕そろそろキレて良い!?!?」とこんな感じで暴れる悟を宥めるのが大変だったほどだ。
私はピッタリとハマった指輪から悟へ視線を移すと、今にも泣き出しそうなほどうるうると瞳に涙を溜めた悟を見てニコリと微笑んだ。
「悟、誕生日おめでとう」
「どうしよう僕…嬉しすぎて…泣きそうなんだけど」