第31章 大切な日
玄関先で白いマフラーをふわりと巻けば、そのままバックを持って家を出た。
どうしよう…何か緊張してきたかも…悟喜んでくれるかな。
待ち合わせの駅前へ行くと、仕事終わりの人や飲みに行く人なんかで賑わっている。
その中でも一際目立つ存在。
周りからは一つ飛び出たその身長に、綺麗な白髪が遠くから見てもすぐ分かる。
いつもの目隠しではなく、サングラスをかけ黒の細身のパンツにコートを羽織った彼は、目の前に二人組の女の子が頬を染め悟を見上げていて、どうやらいつも同様ナンパをされているらしく…笑顔でやんわりと断っているのが分かる。
本当高専の時から、待ち合わせの時はいつだって女の子に話しかけられてるなぁ
だけどあの頃と違うのは、威嚇する猛獣のような雰囲気ではなく。やんわりとした笑顔でスマートに断っている所だ。
そんな姿を少し遠くから観ていると、それに気が付いたらしい悟か片手を上げて私へと嬉しそうに満面の笑みを見せた。
その瞬間、トクンっと高鳴る心臓。悟を少し久々に見たからだろうか。それとも…周りに向けていた笑顔とは違い私を甘く優しく見つめてくれるからだろうか。
そんな私の方へ歩いてくる悟を見て、私も慌てて彼へと駆け寄ると、そのまま悟の胸へと飛び込んだ。
「どうしたの?リンちゃん、珍しく大胆だね♡」
悟の胸へと顔を埋め、彼の体温を感じる。トクトクと聞こえてくる心音が私を安心させ癒してくれる。
「会いたかった」
「僕も会いたかったよ」
周りの事も気にせず、悟を抱きしめそんな事を呟けば…悟も嬉しそうな表情をした後、私を優しくぎゅっと抱きしめた。