第5章 教室
「言っとくけど浮気じゃないよ!七海君と付き合う少し前の話し!」
「いやいや!私が驚いてるのはそこじゃないから!」
「え?」
硝子は呆れたように「はぁ…」とため息を吐き出すと頬杖を付いた。
「で?キスされて甘い言葉でも囁かれたわけ?」
「え?甘い言葉?何で?誰に?」
「五条に。好きだよとかなんとかさ」
「悟に?好きだよって?まさかー!そんな事言われるわけないじゃん!むしろ喧嘩しちゃったし」
「喧嘩って…」
「だって悟ってば最低なんだよ!少女漫画みたいな雰囲気だったからキスしとかないと失礼だと思ってとか言ってきたの!!」
昨日の事を思い出し、一瞬恥ずかしくなったものの…悟の失礼具合を硝子に伝える。
「はぁ…あの馬鹿ヘタレだとは思ってたけど、そこまでとは…」
「怒って蔵飛び出して、喧嘩したままなんだよね…だから今日気まずくて」
教室の席順は、傑、悟、私、硝子だ。だからどう考えても悟と会わないわけにいかないし、むしろ視界に入る距離だ。そもそも同級生が四人しかいないんだし…喧嘩したままなわけにはいかない。
「まぁきっと悟は気にしてないだろうから、私が普通な感じでいれば良いんだと思うんだけど…」
「五条が気にしてない…ね。まぁアイツの自業自得だけど」
硝子は少し考えるそぶりを見せた後、もう一度深いため息を吐き出した。