第30章 紙切れ一枚
そんな時だった、一番手前で水分補給をしていた棘君が「明太子!!」といきなり大きな声を出したのだ。そしてその手はある場所を指差していて。
私含め他の全員が、その棘君の指差した方向へとゆっくりと視線を向ける。
そしてそこにあったのは…
悟が手に持っている【新婚旅行大特集!!】という雑誌…
私はそれにギョッと目を見開くと、生徒達も同じだったのか大きく目を見開き驚いた表情をしている。
ただ一人…
「あっれー?もしかしてバレちゃった?⭐︎」
と、まるで隠す気など初めから無かったように「てへぺろ」とでも言ってしまいそうな表情でニヤけた悟がその雑誌を目の前に掲げた。
もしかして…この人…わざとなのでは。わざと見つかる様に堂々と持っていたのでは…
そう思いたくなるほど悟は余裕気で楽しそうにその雑誌を見せびらかしている。
「悟とリン…結婚したのか…?」
唖然とその雑誌を見つめたパンダ君が私と悟を交互に視界に入れる。そんなパンダ君に悟は「よくぞ聞いてくれました!!」とやたら元気よく大きな声を出すと、隣に立っていた私の肩をグイッと引き寄せて。
「僕達なんと!婚約しました〜!!ちなみに入籍も近々するよ♡多分来週にはしてる♡」
本日2回めのこの流れ…
いやだから…五条家当主様で呪術師最強の悟の婚約結婚話をこんな簡単に周りに言っちゃって大丈夫なの…?しかも生徒達に…
そう思うものの、もう悟にこんな事をいちいち言っても仕方ない様な気がして…悟が良いと思うならそれで平気なのかな…?と思えてくるから不思議だ。
まぁきっと彼なら、邪魔をする者、害をなす者には徹底的な対応をするタイプだから大丈夫なんだろうけど。