第29章 五条家当主
案内されたのは部屋の奥にある露天風呂で、部屋付きのお風呂なのにも関わらずかなり広々とした露天風呂の大きさに驚く。
「お着替えは浴衣をご用意致しました。お風呂から上がりましたらお手伝いさせて頂きますので、お声かけ下さい」
着替えをお手伝いしてもらうの!?と思いながらも、浴衣を着たことのない私にはどうやって着たら良いかもちろん分かるはずもなく「分かりました、お願いします」と申し訳なさそうに言うと、女性は優しく微笑み脱衣所から出て行った。
とりあえずシャワーで念入りにこびり付いた血を洗い流しながら体全体を洗っていく。そのまま髪も洗い終えるとゆっくりと露天風呂へ浸かった。
「ふぁー、良い気持ちぃ」
肩まで浸かり静かにゆっくりと溜息を吐き出す。
そしてふと思う。悟は大丈夫だろうか、私じゃないけど…無茶な事をしてないだろうか。
「早く戻って来て…悟」
そんな私の小さな声は誰にも聞かれる事なく、ただ静かに消えていった。