第28章 誘拐
「何でか分かるよね」
その真剣な眼差しに、そのあまりに静かな声色に…私は小さく口を開く。
「無茶な事ばかりするから…」
「大体は合ってる、でも外れ」
「……じゃあ、何で…?」
恐る恐る悟を見上げれば、悟は碧色の瞳を細くし口角を軽く持ち上げると…
「君が僕よりも先に死ぬなんて、許されないんだよ」
そんな悟の言葉に、思わずグッと言葉を飲み込む…何故なら先ほどまで普通ならあり得ないほどの無茶な行いをしていた自覚があるからだ。悟の事となると感情を抑えきれていない自分がいることも分かってる。
「10人以上いる相手に挑むとか何考えてんの、アイツらオマエを殺そうとしてたんだぞ。それにリンの実力なら帳を解いて逃げる事なんていくらでも出来たはずだ」
先ほどまでの声とは違い、少しだけ怒鳴るようにして吐き出された言葉と、歪められた表情は私を心配しているんだという事が嫌でも伝わってくる。
「…ごめん、なさい」
「それにあんなクソ女庇うとかあり得ないだろ、あんな奴死んで当然。なんなら僕に何かされるより呪霊に殺された方がよっぽどマシだっただろうね。だからリンが庇う必要なんてなかった」
「だけど目の前で誰が傷付くところを見て見なふりなんて出来ないよっ」
そんな私の言葉に、やっぱり悟は大いに呆れたような溜息を吐き出すと。
「リンをうちの問題に巻き込んだのは僕だ、僕が甘かったからこんな事が起きた。だけどもう絶対にこんな事はさせないよ。リンに指一本手出しはさせない。だからリンも、もう二度とこんな無茶はするな、こんなんじゃ僕の心臓がいくつあっても足りない」