第28章 誘拐
襖を勢いよく開き中庭へと向かう。
そしてそのまま両指を交差させ手のひらを組むと、一瞬にして辺り一面の景色が変わる。
「ごッ五条さん!?!?」
高専内に突然現れた僕に腰を抜かしたような格好で唖然と見てくる伊地知は、丁度車に乗るところだったのか手には車のキーを持っている。
「伊地知、至急リンの所まで向かえ。10分…いや5分で到着させろ」
「はっはい!!!」
真顔のまま話している僕に、伊地知は震えるようにして声を絞り出した後、慌てて車を発進させた。
現場へ到着すると、帳の中から複数人の呪力を感じる。もちろんリンのもだ。その感覚に少しばかり息を吐き出し安心すれば、帳を破り中へと入った。
目の前には無惨にも崩れた廃墟ビル。
ガレキの側には複数倒れている黒いスーツを着た男達。
そして、その中心部では…
刀を振り下ろし複数の男達と戦っているリンの姿。
肩あたりの服は大きく破れ、刀を握り締める腕からはポタポタと血が滲み出ているのが分かる。
そんな光景を見た瞬間、僕の呪力の抑えが効かなくなり溢れ出しそうな感覚が全身を包み込んだ。
だけど彼女の表情が見えた瞬間気が付く。
見たこともないほとの鋭い眼光に、息を切らせることもなく目の前の男達を次々と倒していく。
もしかして…リン…めちゃくちゃキレてる…?