第28章 誘拐
「素早いな、さすが一級呪術師」
肩に大きな斧のようなものを乗せたガタイの良い男と、その隣には黒髪で顔の整った綺麗な女性。あの男がビルを破壊したんだろう。
何かあの女の人…何処かで見たことあるような気がする…
「あなたたち、何者ですか」
背中に背負ったまま刀に手をかければ、目の前の男はニヤリと笑いそしてその隣の女性は私を真っ直ぐに見下ろしたあと、ゆっくりと口を開いた。
「私のこと、覚えておりませんか?私はあなたのことを一日たりとも忘れたことはないというのに」
やっぱり、私とこの女性どこかで会った事があるんだ…
呪詛師…ではないよね…
だけど今はそんな事よりも。
「呪霊は貴方達が祓ったの?あと、何故ビルを壊したんですか」
そう言って強く睨み付ける私に、女性は余裕げな表情を見せると小さく笑った。
「呪霊は私の部下が祓いました、あとビルを壊したのはあなたの実力を見るため。私は今日あなたに話があってここに来たのです」
実力?何で私の実力なんかを知る必要があるの…
そもそも話があって来たって言ってるけど、ビルを壊して私を追い詰めるとか全然話し合いで済んでないんだけど。
目の前の彼女をジーっと見つめてふと思い出す。
あの人…もしかして…
「ずっと前に悟の家で会った人…」
ポツリとそう呟きこぼすようにして口を開けば、目の前女性は私を見つめ小さく笑う。