第28章 誘拐
廃墟ビルの真上辺りから黒い影がゆっくりと降りてくる。
そして辺り一面が黒く、そして暗くなると…私はその中へと足を進めた。
背中に背負っていた刀を鞘からゆっくりと引き抜き片手で握りしめる。
コツコツとブーツの足音がビル内に響き、辺りを見渡すが…呪霊の姿どころか気配すら感じられない。
おかしいな、帳を下ろしてから結構たつのに…二級呪霊どころか低級すら現れない。
私はそのまま上の階へと進むと、最上階の5階に差し掛かった瞬間変な違和感を感じた。
「…………」
呪霊じゃない、だけど…何かいる。
……人…?
次の瞬間、
ドッガガガガーーーーンッッ!!!!
大きな爆発音とともに崩れていく床。
「ちょっ!嘘でしょッ!?」
床の中心部からガラガラと下へ崩れていく。
私はそのまま全速力で走ると窓ガラス目掛け飛び込んだ。
刀の柄を使い飛び込む瞬間にガラスを叩き割る。ここは5階だ、まぁ普通に飛び降りたら死ぬ。
だけど私は窓ガラスから飛び出した瞬間には刀を鞘へと収め、ビルの壁に付いているパイプを掴むと、そのまま勢いよく下まで滑り降りた。
「何でいきなりビルが…」
ビルを見上げれば3階あたりまで崩れているのが分かる。
そんな状況に眉間へシワを寄せたところで、背後に呪力を感じバッと振り返り再び刀を握りしめた。