第28章 誘拐
任務服へと着替え、2人一緒にマンションを出る。マンション下では悟には五条家のお迎えが、私には補助監督の山田さんがお迎えに来ていて。
「じゃあ僕今日は遅くなるから先に寝ててね…ごめんね…」
「うん分かった、先に寝てるね」
まるでしょぼんと耳と尻尾を垂らした犬みたいに悲しそうな悟。そんな悟を見ていると、何だか私まで悲しくなってくる。
まるで数ヶ月間お別れでもするのかというような悟の態度に、私は後ろ髪を引かれる気持ちで手を振ると、私の車が発車するまで悟は外で見送ってくれた。
私は今日は確か比較的楽な任務だったはず。
タブレットに送られてきた情報を読んでいく。
新宿の廃墟ビルにて二級呪霊数体を確認…か。数体って結構曖昧だけどまぁすぐ終わるかな。
しばらくして目的の廃墟ビルに着き車から降りると、補助監督の山田さんのスマホが鳴り響く。
「あ、すいません。少し出ても平気ですか?」
「うん、良いよ良いよ!帳も自分で下ろしとくから気にしないでゆっくり電話してて、すぐ終わると思うから」
「すみません!終わり次第すぐに向かいますので!」
「大丈夫だよー」
山田さんへと手を振ると、廃墟ビルの目の前で立ち止まりそこを見上げ人差し指と中指を合わせ口をゆっくりと開く。
「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」