第28章 誘拐
「おはよ〜」
「あ、おはよ悟」
洗面所で顔を洗っていると、眠そうな悟がやってきて隣で歯ブラシを取り出す。
大きな鏡に映るのは、お揃いのパジャマにお揃いの歯ブラシを持った私達の姿。もう見慣れた光景なはずなのにそれが何だか今更ながらに嬉しくて、思わず「ふふっ」と笑うと悟はキョトンとした顔をして私を鏡越しに見つめた。
そしてしばらくすると、まるで何かを思い出したかのようにして小さく溜息を吐き出し私をぎゅっと背後から抱きしめる。
「そういえは僕今日本家に行かないといけないんだよ〜」
項垂れるようにして私の肩に顎を乗せる悟は、嫌そうに顔を歪ませる。
「そうなんだ、珍しいね」
「何でも急ぎの用件が何個かあるらしくてさ…直接来て片付けろって言われた」
「わぁ…当主って大変なんだね、ただでさえ悟はいつも忙しいのに」
「本当だよぉーもう僕を殺す気かってのー」
くるりと悟へ振り返ると、悟の綺麗な白髪の髪をサラリと撫でる。
そういえば悟は呪術界御三家の一つ五条家の当主様なんだった。なんだかすっかり忘れがちなんだよね…普段五条家の話とか一切しないからなぁ…
それにしても、特急呪術師に高専の先生、そして五条家当主だなんて…悟って本当にどれだけ多忙なんだろうか。
毎日毎日夜中まで仕事をしているわけだよね…私も少しでも悟の力になれたら良いんだけどな…
「今日一日大変だと思うけど頑張ってね、だけど無理はしないで」
背の高い悟を見上げるようにして目尻を下げ微笑むと、悟は私を力一杯ぎゅっと抱きしめ「うぅー僕の癒し!最強の癒し!」と言って私の首元へぐりぐりと顔を埋めた。
本当悟ってこういうところ可愛いなぁ
まぁきっと硝子とかにいったら、五条が可愛い?何言ってんの?とか言われそうだけど。