第26章 恋人紹介
「リン、こっちこっち〜」
「ごめん悟!遅くなったー!!」
「いーや、僕もさっきまでくだらない老人の戯言に付き合わされてたから大丈夫だよ」
はぁはぁと息を切らしながら高専のグラウンドの近くで手を振っていた悟へ走っていき近寄れば、悟はそんな私を見て乱れた髪を耳へとかけてくれる。
「急に呼び出して悪かったね」
「全然平気だよ!それにこれでやっと悟の先生姿が見れるねっ」
私はニコニコと悟を見上げると、そんな私を優しげに見つめる悟の後を付いて歩く。
今日は突然悟からの連絡が入り以前話していた、新しく高専に入学した乙骨憂太君へ刀の扱い方を教えて欲しいとの事だった。
まぁ正直、悟なら刀だって何だって本気を出せば教えることは可能なんだろうけど、なんせ彼は常に忙しいからな。こうして少しでも悟の力になれるなら嬉しい。
「お、いたいた。今日も可愛い僕の生徒達は頑張ってやってるね〜」
グラウンドへ続く階段を降りれば、階段に座っている男の子1人とパンダ君が目に入る。
そしてさらにその奥では、グラウンドで今まさに呪具同士の手合わせをしている男の子と女の子。
その男の子の方へと視線を止めると、そこから溢れ出すあまりに禍々しい呪力に思わず一瞬動きを止めた。
「ははっ、すごいでしょ。あれが乙骨憂太とそんな憂太君を愛してやまない折本里香ちゃんだよ」
隣では、珍しく真面目に私を見下ろす悟がそう冷静に言葉を落とす。
「特級過呪怨霊…初めて見たよ」
「まぁ憂太に危害を加えなければ特に出てくる事はないんだけどね。出て来てなくても呪力ダダ漏れだよね」
「うんすごいね、驚いた。それにしても…愛だね」
「そうね、青春だよね〜」
…青春…なのか?