第24章 引越し
悟は、落としてしまった紙袋を拾い集めると私の手を繋ぐ。
「今日はもう帰ろっか、早くリンと家でくっつきたい」
「うん、そうだね」
「夜ご飯はデリバリーでも頼んで、ゆっくり映画でも観ながら食べよ」
「同棲1日目に喧嘩なんて良くないもんね、お家でまったりしよっか」
悟の手をぎゅっと握り返すと、悟は何かを思い出したようにサングラスをポケットから取り出す。
「これ、付ける?」
「え?悟のサングラス?」
「ほら昔、泣いて目が腫れたとか言って僕からサングラス奪い取ってたでしょ」
その悟の言葉に、少し考えたあと確かにそんな事あったかも…と思い出す。それにしても…
「奪い取ったって言い方悪くない?」
「いやいや、あれは完全に奪い取ってた。僕今でも鮮明に覚えてるよ」
「そんな事いちいち鮮明に覚えてなくて良いからっ」
「なーに言ってんの、僕はリンのことなら何だって事細かく憶えてるよ〜初めてキスした時どんな顔をしてたかとか、どんな声を出してたか…とかもねっ」
「…〜〜〜〜〜っ」
赤面する私に、悟はニヤリと口角を上げ意地悪気に笑うと。持っていたサングラスを私へかけてくれた。
「うん、可愛い」
外でサングラスをかけていない悟はすごく新鮮だ。
夕日のオレンジ色が悟の碧色の瞳に綺麗に反射して、キラキラと光っている。
あ…そういえば…こんな光景…いつか見た事がある。
「……あのキスの日」
あのキスの日、私は夕日が反射した悟の瞳があまりに綺麗で…まるで吸い込まれそうで…気が付いた時には「悟の瞳…綺麗…」確かにそう呟いた。
私のそんな言葉に悟は「ん?キスの日?」と首を傾げる。
「あのキスの日も確か、悟の瞳がこんなふうにキラキラしてて綺麗だった」
悟を見上げ、じっと見つめる私を…悟は少しばかり驚いたような表情で見下ろすと。
「そっか、リンも初めて僕とキスした日のことちゃんと覚えててくれてたんだ」
と、オレンジ色が反射した瞳を優し気に細めとても嬉しそうに私を笑顔で見つめた。