第24章 引越し
その声にゆっくりと振り返るとと、先ほどこちらを見ていた二人組のうちの一人の男性が私の前に立ち止まる。
えっと…私に話しかけてるよね…?
一応あたりを見渡した後、他に人がいないことを確認してから声を出した。
「えっと…私ですよね?」
「はい!」
その男性は、ほんのりと頬を赤く染め、そして私を真剣な表情で見下ろす。
「あの、本当いきなりで驚くかと思うんですけど…」と少しの間を開けたあと。
「一目惚れしました!!良かったら連絡先交換して下さいっ」
「………え…」
え?えぇ!?一目惚れ!?今一目惚れって言った!?!?
あまりの突然の男性の言葉に、私は仰天すると…目の前の彼の恥ずかしそうにしている表情を見て自分もボッと思わず赤面してしまう。
「あ…えっと…あの…」
だけど「彼氏がいるのでごめんなさい」そう言うとした私の言葉は、背後から突然やってきた声によって静止された。
「僕の恋人に何か用かな?」
いつもよりも少しだけ低い声。
優しい口調なはずなのに、その声は冷たく淡々としていて…
「……悟」
私の腹部辺りへ腕を回すと、グイッと後ろへ引き寄せられ悟と身体がくっ付く。
悟……もしかして今の聞いてた…
そんな事はわざわざ聞かなくても分かった。
何故なら、瞳を細めゆるりと口角を上げた悟は…
笑っているはずなのに、とてつもないほどのオーラを放ちながら…呪力をダダ漏れにしていたからだ。
多分、わざとだ。
いや…絶対にわざとだ。