第24章 引越し
新宿の駅近くに着き、まず初めに向かったのは食器の専門店。シンプルな物から綺麗で可愛らしい物まである。
「あ、これ可愛いね!」
薄い水色と薄いピンク色のお茶碗を指差す私に、悟が後ろからヒョイっと顔を出して覗き込む。
「うん!良いね!じゃあお茶碗はそれにしよっか」
「うんっ」
そして店員さんにお願いしようと値段を見たところで思わず仰天した。
3万円!?え?お茶碗一つ3万円!?嘘でしょ?
三千円の間違いではないかと思って再びゼロの数を数えてみるが…やっぱりどう考えても3万だ。つまりペアで6万円??
大きく目を見開く私に悟は「どうしたの?」と顔を覗き込み首を傾げる。
「ちょっと…ここのお店高いんじゃ…?」
お茶碗の値札を指差しながら悟を見上げると、悟も私に合わせるようにして値札へと目を向ける。
「え?そう?ペアで6万なら安くない?」
「……………」
だめだ、どうやら私と悟の金銭感覚は全然違うらしい。というかあのマンション2つ買いの時点で気がつくべきだった…私は正直お皿なんて最悪100均でも全然平気なんだけど…
「値段なんて気にする必要ないよー、買うの僕だし」
「いや…そういう問題ではなくてですね…」
「まったくリンは謙虚だよね〜まぁそんな控え目なところも好きなんだけど♪」と言った悟は店員さんにお茶碗を購入する事を伝えると。
「僕って溢れるほど金持ってるのに忙しくて金の使い所がないわけ、もう溜まってく一方。だからさ、ほーんと全然気にしなくていいんだよ。むしろリンと一緒に色々買えるとか嬉しいし僕金持ちで良かった〜って感じだから」
本当にそう思っているんだろう。ニッコリと笑った悟は「ほらほら他のも選ぼう」と言って私の手を取ると、今度はマグカップコーナーへと向かった。
というか、悟の今の発言でこの世界中の人何人を敵に回しただろうか…
だけど悟がそう言うなら…良い物は長く使えるって言うし…このお茶碗とっても大事にしよう…絶対割らないようにしよう…と私は密かに心に誓った。