第24章 引越し
マンションの下へ降りると、しばらくしてタクシーが来て私が乗り込んだあと悟が乗り込み行き先を告げた。
隣に座っている悟は、私を愛おしげに見つめるとそっと手を繋ぎそれをにぎにぎとしながら遊んでくる。
「悟の買いたい物って何?」
タクシーが来て途中になっていた会話を思い出すようにして聞くと「僕はね、マグカップと茶碗と箸でしょーあとはパジャマに歯ブラシにスリッパなんかも良いよね」と楽しそうに買いたい物を考えているようだ。
そして最後に「あ、ちなみにこれ全部お揃いだから♡」と言って機嫌が良さそうに口角を上げた。
「えぇ!?これ全部お揃いで買うの?多くない?それにお茶碗とかわざわざ買わなくてもあるじゃん」
「あるけどお揃いじゃないでしょ?」
「まぁそうだけどさ、すでにあるのに勿体無くない?」
「えーでもせっかく同棲するんだから同棲してますって感じの事したいじゃん、それに僕憧れだったんだよね〜」
「確かにお茶碗のお揃いとかすごく同棲っぽいとは思うけど…」
「ね?お願い〜僕の夢叶えて?」
サングラスを少しズラし、うるうるとした瞳で見つめてくる悟。私がそんな顔をされたら弱いのを分かっていてやってるな…しかもわざわざサングラスをずらすなんてあざといの確信犯じゃないか。
「もぉ…分かったよぉ」
そんな悟に結局いつも通り流されてしまう私は「その顔すればお願い聞いてくれると思って…」と小さく呟くとため息を吐き出した。