第24章 引越し
荷物を片付けている途中、ポケットに入れていたスマホが震えている事に気がつく。
画面には【家入硝子】の文字。硝子から電話がかかってくるなんて珍しいな。
私は通話ボタンを押すと、そのままスマホへ耳を傾けた。
「もしもし、硝子どうしたの?」
“あぁ、今平気か?”
「全然大丈夫だよ〜」
“そうか良かった。それより今日から五条と一緒に住むんだろ?”
硝子には悟と住む事はもちろん言ってあって、日にちが決まった時もメッセージで一応伝えていた。なんだかんだ面倒見の良い硝子の事だからきっとわざわざ心配して電話をかけてきてくれたんだろう。
「うん、今日からだよ!それで悟午後に休み取ってくれたらしいんだよね」
“よく休めたなアイツ、どうせまた伊地知に無理を言ったんだろ”
どうやら硝子も私と同じ考えだったらしく、呆れたような溜め息が電話越しに聞こえた。
“それより、本当にアイツと一緒に住んで大丈夫なのか?”
「えー?何で?」
“ワガママで自由人、おまけに適当でデリカシーもない。そんな奴と住むなんてリンが疲れないか心配だ”
悟ってば相変わらず酷い言われようだな。高専の時は傑と硝子にいつもクズクズ言われてたっけな…
だけど私は、心配そうな声を出す硝子に「大丈夫だよっ」と伝えると。
「悟ちゃんとご飯作る時も色々手伝ってくれるし、片付けとかもやってくれるよ!まぁワガママとかは良く言ってるけど…でもいつも優しくしてくれる。だから大丈夫!心配しないで」
悟は確かに硝子が言うように自由人でワガママなところもあるけど、だけど何よりも私を想ってくれている事を私は知っている。
どんなに疲れていても、どんなに忙しい時でも、私と一緒にいる時間を作ってくれたり、2人での何気ない会話を大切にしてくれている事を知ってる。
悟はいつも優しい、いつだって私の事を一番に考えてくれている。だからむしろ私はそんな悟に何か返せているかな?と心配になるほどだ。