第24章 引越し
その表情は、とても甘くとても優しく私を見下ろす。
「そうだね!嬉しいな」
「だね、今日から毎日リンと一緒かと思うと僕も嬉しくてしょうがないよ」
私もそれに負けないほどの笑顔で悟を見上げると、悟は私を抱き寄せぎゅっと力を込めた。
「あと僕今日午後休み取ったからさ、帰ってきたら一緒に買い物行こう?色々買うものとかあるでしょ」
「よく午後だけでも休めたねー」
「一週間前からこの日は絶対任務入れるなって言っといたんだよ、それなのに一件任務入っちゃってさ。ほーんと最悪だよね」
「別に無理しなくても平気だよ?今あるもので足りてるし」
「えーそんな事言わず一緒に買い物行こうよ〜おそろいのマグカップとか歯ブラシとか買おうよー」
ブーブーと唇をとんがらせる悟に「分かったよ、一緒に買い物行こうね」と言うと、悟は満足したように私の身体を離す。
きっと悟がもの凄いワガママな態度で休むために伊地知君あたりを困らせたんだろう…なんだか想像が付く。伊地知君平気かな…ストレスで胃が痛くなったりしてないかな…
だけど私のために休みを取ろうとしてくれたことは素直に嬉しいし、悟と買い物に行ける事も嬉しい。
そんな話をしているとブーブーっと悟のスマホが鳴って、悟はそれを耳に当てる。
「はいはい今行くよ、分かってるっつーの。少しくらい待たせたって別に平気でしょ」
そんなやり取りをしながら、面倒くさそうにスマホを切った悟は、先ほどの電話の声とは違い私を優しく見つめると。
「じゃあ僕行ってくるね、リンは引越し頑張って。手伝えなくてごめんね」
「大丈夫だよ!荷物少ないからきっとすぐ終わるし!悟も任務頑張って」
ヒラヒラと手を振りエレベーターへ乗り込む悟を見送り、私も自分の部屋へと戻る。
悟が帰って来るまでには荷物を運んで片付けまで終わらせたいな。まぁ海外から帰ってきてから買い物に行くほどの暇もほとんどなかったから物もあんまり増えてないし、すぐに終わるかな。