第23章 待ちきれなくて
2人で夜道を歩き、手を繋ぐ。
月を見上げれば、あぁ今日は満月か…そんなことまで考えてしまうほど平和で穏やかだ。
きっと今日悟がここに来てくれなかったら、私達はまだ今頃喧嘩をしたままで…きっとお互い苦しくモドカシイ気持ちのままだった。
こうして、平和で幸せだなーって思う事も
満月が綺麗だなって感じるさえなかった。
「ねぇ、リン」
空を見上げていた私に、悟のそんな声が届く。
「ん?なーに?」
視線を空から悟へと移せば、悟は真っ直ぐに私を見下ろし真剣な表情をしていた。
「僕達、一緒に暮らさない?」
それはあまりに突然の事で、
悟の静かな声だけが夜道に響き渡る。
遠くの方では、車の走る音や人々が話している声も聞こえているはずなのに、私には悟の声しか聞こえてこなかった。
「実は前から考えてはいたんだけど、今回喧嘩してよりそう思った。やっぱり出来る限りリンのそばに居たいって。たとえ喧嘩してもリンと同じ家に帰りたい」
「……悟」
手を繋ぎ横を歩いていて悟は、私の方へと向くと両手をギュッと握りしめる。
「僕忙しくてほとんど家にいないし、本当寝るためだけに帰る事も多いからきっとリンには寂しい思いさせちゃうと思う…けど疲れて家に帰ってリンが同じベッドで寝てるのを見るだけで僕は幸せ」
私を見下ろす悟の瞳が、優しく弧を描くようにして緩やかに微笑む。
「こうやって今みたいにさ、一緒に買い物したり、一緒にご飯食べまたり、一緒にテレビ観ながらゴロゴロしたり、そんな当たり前の事をリンとしたい。そんな毎日を少しでもリンと一緒に過ごしたい」
それは先ほどまさに私が考えていたことで…夢に思った事そのもので…