第23章 待ちきれなくて
その悟の言葉に、堪えていた涙がぽたりと落ちる。
「悟…会いたい…」
涙を服の袖で拭きながら、そう呟くと。
悟は「…僕もだよ」と優しく言った後。
“あのさ…引かないでね”
「……何が?」
“僕ってほら、リンの事となると理性が効かないから”
「…何の話ししてるの…?」
“重いとかも言わないでね”
「だから何が…?」
“ドア、開けて”
「ドア?…何で?どこの?」
“リンの部屋のドア”
私はその言葉にハッとし、慌ててベッドから降りてドアへ向かうとそれを勢い良く開いた。
「何で…いるの…悟」
目の前にはいつもの上下黒の服に白の目隠しをした悟が、スマホを耳に当てながら立っていたのだ。
「リンに会いたくて、来ちゃった」
「来ちゃったって…ここ静岡県だよ…」
「うん、実は1時間前くらいに着いてた」
「…え?どういうこと?え?」
「リンと喧嘩したままなのが辛くて、居ても立っても居られなくてさ…任務速攻で終わらせて来たんだよね」
私が開けていたドアを支えるようにして悟は手を伸ばすと、そのまま私をギュッと抱きしめながら部屋の中へと入った。
悟の後ろではバタンっと勝手にドアが閉まる音がする。
「…リン、会いたかった。この二日間マジで辛かった…苦しかった…」
悟の弱々しい声が私の耳へと届く。
「私もだよ…悟のことばっかり考えてた…不安にさせてごめんね」
「いや、僕こそごめん。もう絶対喧嘩したままどっちかが出張とか勘弁だって思ったよ」
「うん…そうだね」
「離れ離れ…キツイ。忙しくて会えないことなんて良くあるのに…喧嘩したらこんなにキツイんだね…こんなに長く感じた二日間は初めてだよ」
「私もだよ…すごく長く感じた…」
悟は再び私の背に回していた腕にギュッと力を込めると「キス…したい」と耳元で囁き「…うん、私も…」という私の言葉を聞いた瞬間
深く深く私の唇を塞いだ。